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講座の紹介

 

核融合シミュレーション講座

核融合シミュレーション講座イメージ

核融合プラズマのような複合複雑系で発生する現象を総合的に理解していくためには、実験装置を用いた研究とともに、理論・シミュレーション研究の果たす役割が大きく、とりわけスーパーコンピュータを駆使した大規模シミュレーション研究は、他の学問分野に先駆けて発展してきました。本講座では、シミュレーション研究に必要な様々な手法や科学的可視化研究を教育するとともに、プラズマ物理の理論体系化を目指した教育研究を行います。さらに、複合複雑系で発生するすべての物理過程を取り込み、閉じ込めスケールサイズでの実験結果の予測を可能とする総合的シミュレーション体系の構築を図ることにより、シミュレーション研究を新しい科学分野として確立・発展することを目指してゆきます。

磁場閉じ込めプラズマシミュレーション

LHDをはじめとする磁場閉じ込め装置内のプラズマは、様々な要素が絡み合い非常に複雑な挙動を示します。そのため、その挙動をよく理解することは、閉じ込めプラズマの実験予測や提案のために非常に重要となります。シミュレーション研究では、以下に挙げた具体的な研究課題を通じて、磁場閉じ込めプラズマの複雑挙動の解析を行っています。

LHD実験プラズマの磁気流体シミュレーション

LHDにおける崩壊現象や非線形緩和現象を対象として、磁気流体力学(MHD)などの流体モデルを用いたシミュレーション研究を行い、プラズマの巨視的構造変化について解析を進めます。そして、実験結果に対する解釈や従来の安定性の概念に対して、新たな示唆を与えることを目指します。具体的には、シアフローが交換型モードの安定性に与える影響、反磁性効果を含むMHDシミュレーション、共鳴摂動磁場と圧力駆動型モードとの相互作用等について、教育・研究を行います。また、新たな数値シミュレーションコードの開発や、計算結果の可視化手法などについても研究指導を行います。

LHD実験で観測された超高密度プラズマでの圧力崩壊現象を再現したMHDシミュレーション

LHD実験で観測された超高密度プラズマでの圧力崩壊現象を再現したMHDシミュレーション
LHDプラズマのMHDシミュレーション

LHDプラズマのMHDシミュレーション

高速粒子と磁気流体モードの相互作用

核融合プラズマにおける磁気流体と高エネルギー粒子の相互作用およびそれを解明するための粒子・流体統合シミュレーションについて研究及び教育を行います。磁気流体・高エネルギー粒子相互作用は高速アルファ粒子が発生する核燃焼プラズマにおいて特に重要な研究課題であると同時に、磁気流体波動やランダウ減衰・成長などのプラズマ物理の主要な課題を含んだ興味深い問題です。

LHDプラズマにおいて高エネルギー粒子が増幅する巨視的振動のシミュレーション(色はプラズマの速度揺動分布を表している)

LHDプラズマにおいて高エネルギー粒子が増幅する巨視的振動のシミュレーション(色はプラズマの速度揺動分布を表している)

核融合プラズマの乱流輸送現象の解明

磁場閉じ込め核融合プラズマ研究の重要課題である粒子及び熱の乱流による輸送現象の解明を目標に、大規模数値シミュレーションを駆使した研究を進めています。乱流輸送の予測には、ゾーナルフロー等の自己組織化を通じた輸送抑制機構に代表されるプラズマ乱流の非線形性を理解する必要があります。そのために電磁場と相互作用する5次元位相空間における粒子分布関数を追跡するジャイロ運動論シミュレーション(または3次元ジャイロ流体シミュレーション)を行います。さらには核融合プラズマにおける密度及び温度分布を予測するために、大規模乱流シミュレーションで得られた知見を活用し、本質的な支配物理の抽出と乱流輸送モデルの構築に取り組みます。

LHDとプラズマの乱流渦(プラズマの色は、温度の不均一性によって発生する乱流渦を表している)

LHDとプラズマの乱流渦(プラズマの色は、温度の不均一性によって発生する乱流渦を表している)
5次元ジャイロ運動論的シミュレーションにより得られたトカマクプラズマ(ITER配位)における乱流場の3次元構造

5次元ジャイロ運動論的シミュレーションにより得られたトカマクプラズマ(ITER配位)における乱流場の3次元構造

核融合プラズマにおける新古典輸送現象の解明

3次元トーラス磁場に閉じ込められた荷電粒子の複雑な運動とクーロン衝突は新古典輸送現象と呼ばれる粒子・熱流束を生み出します。閉じ込め磁場の形状(ヘリカル、トカマクなど)や温度密度に応じて大きく特性が変化する新古典輸送と、それによってプラズマ内に自発的に形成される両極性電場をドリフト運動論に基づき自己無撞着に解き、プラズマ閉じ込め性能の評価や、両極性電場の乱流輸送への影響、新古典粘性がプラズマ回転に与える影響などの理論・シミュレーション研究を行います。

ヘリカル系の周辺プラズマ輸送

磁場閉じ込め核融合プラズマにおける周辺プラズマ輸送、特に3次元トーラス磁場配位における磁気島を含む磁力線構造が乱れた領域での輸送現象を対象に、数値シミュレーションによる研究を行っています。具体的には、流体モデルやドリフト運動論に基づく熱・粒子・中性粒子・不純物輸送シミュレーションを通して、ダイバータ領域の輸送現象を研究しています。また、数値シミュレーション手法の開発およびその基礎研究について、シミュレーション科学に関する幅広い視野からの教育・研究を行います。

LHDのエルゴディック・レグ領域を一体として解く3次元流体シミュレーション

LHDのエルゴディック・レグ領域を一体として解く3次元流体シミュレーション

その他の主な研究テーマ

  • トカマクプラズマの輸送シミュレーション
  • 多相拡張磁気流体モデルによる固体水素の溶発シミュレーション
  • 磁気流体平衡の拡張
  • 高ベータプラズマシミュレーション
  • LHD周辺磁場構造の理論解析

磁場閉じ込めプラズマ理論解析

現在、そして将来において計算機性能が飛躍的に発展したとしても、複雑なプラズマの振る舞いを逐一再現することは非常に困難です。従ってシミュレーションと現実のプラズマとをつなぐ理論モデルの構築は不可欠です。ここでは理論解析に関する研究課題を紹介します。

プラズマ輸送現象に関する理論解析

磁場閉じ込め核融合プラズマを記述する運動論方程式や流体・輸送方程式の定式化やそれらに基づいた輸送現象の理論研究を行います。3次元トーラス磁場配位プラズマにおける電場・流れ場形成や微視的不安定性に関する解析や、Lagrangian/Hamiltonianを用いた現代的定式化による対称性や保存則に関する理論解析、さらには運動論的性質を取り入れた流体方程式系の完結モデルの考案に取り組みます。

磁気流体モデルに基づく閉じ込め理論解析

プラズマの流体モデルを用いて、MHD及び核融合プラズマ閉じ込め理論について研究を進めています。特に、3次元磁場配位を対象として、等方圧力分布を持つ静止MHD平衡の解析及び非等方圧力分布や流れのある平衡への拡張、MHD線形スペクトラム(安定側及び不安定側)の解析、流れや自発電流を中心とした新古典拡散理論との融合、2流体モデルへの拡張及び運動論的効果の導入等について、理論解析や数値計算手法の開発を行います。さらに、LHD実験結果を用いて、理論と実験結果との比較を行い、理論の妥当性についての検討を進めます。

2流体効果、ジャイロ粘性効果を取り入れたMHDシミュレーション

2流体効果、ジャイロ粘性効果を取り入れたMHDシミュレーション

閉じ込め改善モードに関する輸送解析

プラズマ閉じ込めに大きく影響を与える電場構造や流れのような物理現象の解明を目的とします。核融合プラズマ実現に重要な、閉じ込め改善モードについて輸送研究を行います。新古典輸送が決める電場の非線形性により、電場構造には遷移(分岐)現象が見られます。乱流輸送に対する遷移現象の影響について定式化や解析研究に取り組み、閉じ込め改善モードの実現を目指します。

複雑性プラズマシミュレーション

プラズマをはじめとする複雑なシステムにおいては、時として自己組織化現象や間欠性エネルギー解放現象といった共通の物理現象が現れます。このような複雑性に起因する物理の諸課題に取り組むことにより、新たな理論の構築を目指します。そこで得られる知見は、核融合プラズマに限らず、天文や材料など広範な分野への応用が期待できます。

3次元開放系での無衝突磁気リコネクションのダイナミックス

プラズマ中における構造形成のダイナミックス・自己組織化現象に関する大規模シミュレーション研究を進めています。具体的には、1)ミクロ階層とマクロ階層を繋ぐ無衝突磁気リコネクションの多階層シミュレーション、2)電流層におけるプラズマ不安定性と異常抵抗発生機構に関する粒子シミュレーション、3)エネルギー開放系におけるプラズマ構造形成のダイナミックス、4)磁場閉じ込めプラズマ中で発生する構造形成・自己組織化の物理等に関する教育・研究を行います。

粒子モデルとMHDモデルを結合した多階層モデルによる磁気リコネクションのシミュレーション(カラーマップは磁場のX成分を、高さは再結合した磁場成分(Y成分)を表す)

粒子モデルとMHDモデルを結合した多階層モデルによる磁気リコネクションのシミュレーション(カラーマップは磁場のX成分を、高さは再結合した磁場成分(Y成分)を表す)

粒子シミュレーションによるプラズマ基礎過程の解明

プラズマ粒子シミュレーションにより境界層プラズマ基礎過程を解明する研究を行っています。特に、壁近傍のプラズマ挙動、中性粒子とプラズマの相互作用等の関与したプラズマ構造形成等についてスーパーコンピュータを駆使して探求しています。

プラズマブロブの3次元粒子シミュレーション(周辺プラズマ領域でのコヒーレントなプラズマ構造であるブロブの内部構造。電子密度分布(a)および電位構造分布(b)。自己無撞着な電位構造が形成されている)

プラズマブロブの3次元粒子シミュレーション(周辺プラズマ領域でのコヒーレントなプラズマ構造であるブロブの内部構造。電子密度分布(a)および電位構造分布(b)。自己無撞着な電位構造が形成されている)

分子動力学シミュレーションによる原子スケールの研究

核融合装置内壁に代表されるプラズマと物質の相互作用が引き起こす様々な現象を数値シミュレーションによって解明しています。分子動力学法、密度汎関数理論、二体衝突近似法、動的モンテカルロ法など種々の計算手法を時空間およびエネルギーのスケールによって使い分けるマルチスケール解析を行っています。最近では、これらのコードを組み合わせたハイブリッド手法を開発することで、タングステンの繊維状ナノ構造など、個々の手法では再現が難しい現象の探求も積極的に進めています。

タングステン中でのヘリウム凝集を再現したシミュレーション

タングステン中でのヘリウム凝集を再現したシミュレーション

その他の主な研究テーマ

  • 水素と炭素材との衝突過程の分子動力学シミュレーション
  • 衝撃波による粒子加速
タングステンの繊維状ナノ構造(紫はタングステン原子、青はヘリウム原子を表している)

タングステンの繊維状ナノ構造(紫はタングステン原子、青はヘリウム原子を表している)

シミュレーション手法開発

シミュレーション研究を遂行するためには、現実の物理世界をいかにして数値的に表現するか、その膨大な数値データをいかに効率よく計算処理して、得られた結果をいかにして人間が理解できる形で表現するかといった手法に関する課題に取り組む必要があります。本専攻でも既存の手法の枠組みを超えた挑戦的なシミュレーション手法の開発に力を入れています。

バーチャルリアリティシステム

様々な複雑現象に関する数値シミュレーションで得られる結果は、一般に非常に複雑な時空間構造を持っています。そこで複雑な形状をありのまま3次元空間内で表示可能な、没入型バーチャルリアリティシステムの開発を進めています。4面がスクリーンで囲まれた部屋の中に観測者が専用のセンサー付き眼鏡をかけて入ることにより、高度な没入感が得られ、知的思考の助けとなります。このシステムを利用することにより、数値解のもつ複雑な構造を理解することのほか、実験装置を本物そっくりに再現して装置の最適化への利活用も進めています。

その他の主な研究テーマ

  • 先進的なシミュレーションシステムの構築
  • 高精度・高効率数値計算スキームの開発
バーチャルリアリティシステムCompleXcope

バーチャルリアリティシステム「CompleXcope」
バーチャルリアリティ技術を応用した、シミュレーション結果と実験装置データの同時可視化

バーチャルリアリティ技術を応用した、シミュレーション結果と実験装置データの同時可視化

プラズマシミュレータ

核融合プラズマ閉じ込め物理機構解明とその体系化、それを支える基礎研究としての複雑性科学の探求、シミュレーション科学の確立をめざした共同研究を支援するため、核融合科学研究所に設置されたシステムです。前述のバーチャルリアリティシステムをはじめ、シミュレーションの実行からデータ処理まで、高速ネットワークを介したシミュレーションに関する共同研究を一貫して効率よく推進するための総合的なシステムとして「プラズマシミュレータ」と名付けられました。基幹となる大規模並列型計算サーバは平成27年6月に更新された富士通PRIMEHPC FX100(2,592ノード)で、総記憶容量81 TB、総演算性能2.62 PFlopsのスーパーコンピュータです。

プラズマシミュレータ