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専攻長あいさつ

かつて知の探究者たちは自らのことを philosopher だと思っていました。知を愛する者という意味です。philosophyを日本語では「哲学」と訳すので、いささかニュアンスが変わってしまうのですが、例えば今でいう自然科学は自然哲学と呼ばれていました。物理学も自然に関する哲学でした(ニュートンの『プリンキピア』は正確には『自然哲学の数学的方法』 Philosophiæ Naturalis Principia Mathematicaという題名です)。私は、学生の皆さんに哲学を学ぶために大学院へ来てほしいと思っています。近年では哲学 philosophy という言葉は科学science という言葉で置き換えられることが多いのですが、皆さんが目指している学位 PhD (Philosophiæ Doctor) にしっかりとその名をとどめています。

学問を「科学」というときは「体系」が強調され、その結果として専門分野への分岐が進んできました。最近では、哲学を語るのは哲学者という「専門家」だけになってきましたが、それは専門性だけを重んじる社会の風潮を反映しているように思われます。もちろん皆さんは卒業に向けて、学んだことを職業とするために、専門性を身につける必要があります。しかし、それだけではなく、ぜひこの貴重な時間を哲学のために使ってください。

核融合科学は、さまざまな科学と技術を束ねる総合的な学問です。しかし、まだ体系といえるような構造を確立していない、未知の領域へチャレンジしている生きた学問です。これに参加しようとしている皆さんは、科学も技術も分けて考えてはいけません。物理もあらゆる分野にまたがります。古典力学も量子力学も熱力学・統計力学も場の理論も必要です。どこかで切り分けて、そこさえ押さえておけば良いという分野学ではありません。実験のためには、真空も極低温も超高温も高電圧も高周波も、あらゆる技術を駆使します。これらを修めるためには、知に対する愛によって生まれる飽くなき探求心が必要です。まさしく哲学する心をもってもらいたいのです。

核融合科学専攻では、多くの専門家たちが教員として皆さんを導いてくれると思います。その教員たちも、専門家である前に知を愛する人たちです。ただ研究の方法を学ぶだけでなく、何をどう研究するのかというところから考える力を身につけてください。この専攻で学んだ皆さんが、将来、私たちが知らなかった新しい世界を見せてくれること期待しています。