核融合科学研究は、その黎明期より国際協力の下に平和的に進められ、今日、世界各国で幅広い研究が行なわれています。核融合炉の実現に向けた学術基盤の充実および研究開発のためには、国内はもとより世界の研究者の英知を結集して、長期的展望に基づいた共同研究を進める必要があります。本研究所では、核融合に関する国際的な研究協力の日本側の代表機関としての役割を担うとともに、国際協力による共同研究・研究交流を積極的に推進しています。現在、世界的な国際協力で進められているITER計画、および、幅広いアプローチ(BA)計画においては、国際トカマク物理活動(ITPA)への貢献や超伝導、加熱、燃料供給装置などでの技術開発協力、そして、人材派遣まで幅広い国際研究協力が行なわれています。
国際協力の成果例
ステラレータ・ヘリオトロン協定
- ヘリカル方式核融合研究の国際共同研究ネットワーク
- 国際エネルギー機関において、多国間・多研究機関間のステラレータ・ヘリオトロン技術協力プログラムが締結されています。本技術協力プログラムには、日本をはじめ、オーストラリア、ユーラトム(欧州原子力共同体)、ロシア、ウクライナ、アメリカ合衆国(英語表記アルファベット順)が参画しています。その中でも日本は、副議長を核融合科学研究所長が務める等、主導的な責任を果たしています。 本協定を基盤として、LHDをはじめとした世界各地のヘリカル方式核融合研究の国際共同研究ネットワークを構築し、共同実験の遂行や実験データベースの拡充、共同理論解析などを促進しています。それぞれの実験装置での発見や理論解析を、実験装置の違いを超えて体系化する取り組みが組織的に展開され、研究の進展に大きな役割を果たしています。

プラズマ・壁相互作用協定
- 世界の直線型プラズマ実験装置を用いた国際共同研究
- 国際エネルギー機関の技術協力プログラムの一つであるプラズマ・壁相互作用(PWI)協定は、日本、ヨーロッパ、アメリカ、オーストラリア、イギリスが参加する多国間協定で、日本では核融合科学研究所が執行機関となっています。この協定の下、核融合科学研究所や大学の研究者、研究者の卵である学生が、世界の研究機関で、プラズマと壁の相互作用に関係する国際共同研究を行っています。共同研究では、主に直線型プラズマ実験装置を用いた実験や計算機シミュレーションが行われていて、表面分析による核融合炉の壁材料へのプラズマ照射影響研究、核融合炉心周辺部のプラズマ研究、プラズマ計測法開発などで多くの成果を得ています。