私は、自分自身の研究で、γ線の計測や解析を行っており、放射線に関連する分野について学ぶ機会が多くあります。その中で、核融合に関する話を聞くことがあります。そのため、将来の新たな発電方法として可能性があり、安全な発電方法として注目されている核融合発電を実現するための研究にとても興味を持ちました。将来的には核融合関係の進路も考えており、この夏の体験入学で、実際の研究内容を体験することで、さらに勉強を進める契機としたいと思い、参加を希望しました。

例年と比較し制約の多い年でありましたが、私は運よく現地で参加でき、1日目には、施設内に存在するVR装置、スーパーコンピュータ雷神、大型ヘリカル装置(LHD)などを見学しました。これらの装置はいずれも大規模で、実際に現地に行ってみないとわからない感覚を味わうことができました。また、各所で専門の先生がその装置の用途や豆知識を説明してくださり、大変面白く、為になりました。

2日目以降は、課題のテーマである「分光システムの較正と太陽スペクトルの解析」の実習を行いました。このテーマを選んだ理由は、総研大のホームページに「地上に太陽を」と記載されているように、核融合発電と太陽の関係が強いことから、太陽に関する研究を体験したいと考えたからです。太陽などのプラズマが発する光を分光システムで分光計測することによって得られる波長スペクトルは、核融合に必要なプラズマに関する様々な物理情報を含んでおり、波長スペクトルを解析することで核融合発電を実現するためのヒントを得ることができます。しかし、正確に物理情報を導くには、予め分光システムの詳細な特性を把握しておくことが必要です。そのため、本課題の目的は、試験用光源及び太陽を用いた分光計測から得た結果を考察し、分光システムの特性評価を行うことでした。

実習ではまず、放射照度が既知の試験用光源を用いた分光計測を行い、試験用光源の放射照度のグラフと計測によって得られた波長スペクトルを比較することで、分光システム全体を通した検出効率の波長依存性を補正するパラメータである較正係数を求めました。その後、太陽を用いた分光計測を行い、得られた波長スペクトルと較正係数を掛け合わせることで、太陽の放射照度のグラフを得ました。この太陽の放射照度のグラフはプランクの分布関数(黒体放射の式)に従うため、太陽の放射照度のグラフを沿うようにフィッティングすることによって、太陽表面の平均の温度を求めることができます。計算の結果、約5828℃となり、一般的には、太陽の表面温度は6000℃といわれているため、計算によって得られた値は概ね妥当であることがわかりました。以上より、試験用光源を用いた分光計測で得られた較正係数も概ね妥当であると考えられ、分光システムの特性評価を行うことができました。

実習中は、私が知識不足なために、先生方に迷惑をかけることも多かったです。しかし先生方は一つ一つ丁寧にご教授くださり、理解しながら楽しく実験や解析を行うことができました。また、本課題を進めるにあたって、波長スペクトルを解析するためPythonというプログラム言語を使用しました。以前から、Pythonは学校の講義や研究で触れていたのですが、簡単なプログラムしかコーディングしたことがなかったため、とても苦労しました。しかし、いままで勉強してきたことを実際の研究内容の中で、発揮することができ、発表会を終えたときには、達成感と充実感を感じたのと同時に、さらに研究に役立つことできる勉強を進めていきたいと思いました。

最後になりましたが、このような大変な時期に夏の体験入学を開催いただきありがとうございました。核融合に関する知識はもちろん、実現を可能にするための装置や研究を体験し、ますます核融合に興味を持つことができ、大変充実した1週間であっという間でした。先生方をはじめとする核融合科学研究所の皆様、本当にありがとうございました。また機会があればよろしくお願いいたします。