今年度はコロナウイルスの感染拡大に鑑み、急遽オンラインと現地の同時開催となりました。幸にも私は、夏の体験入学の1週間前からインターンシップという形で研修を受けていたため、引き続き現地で参加することができました。現地参加者は私を含めて2名だけで、その他10名程度がオンライン参加でした。

さて、私の配属テーマは「真空システムを用いた水素同位体の金属内移行現象の観察」というものでした。真空システムの使用方法・駆動原理や水素同位体の取り扱い方法を勉強し、さらに核融合炉での使用が検討されているKドープタングステンの水素同位体蓄積挙動を実験的に調べました。Kドープタングステンは、従来の純タングステンに変わる、プラズマ対向機器材料として注目されています。しかしその材料中における水素同位体の振る舞いはまだ明らかになっていません。実験では圧延率が異なるKドープタングステン試料にあらかじめ重水素を吸蔵させ、試料の温度を900℃まで上げることで重水素を脱離させました。QMSと呼ばれる質量分析器を用いて、脱離した重水素を測定しました。圧延率が高い試料と低い試料で実験を行い、圧延率が高い試料の方が、高温部分の重水素脱離量が増えるという結果が得られました。これは、圧延に起因する試料中の欠陥に捕獲された重水素の離脱と考えられ、加工方法により水素同位体(重水素)の蓄積挙動が大きく変化することが分かりました。Kドープタングステン中における水素同位体の振る舞いはまだ明らかになっていないため、実験結果が予想できず大変でしたが先生方に助言をいただきながら、妥当な考察を導くことができました。最先端研究のリアルを体験することができました。

私は、電気系学科出身のため、真空システムや化学的な物性に関する知識がほとんどなく、実習内容を完遂できるか不安でした。先生方には実験で使用する真空ポンプや真空計の扱い方から、報告会の資料作成まで熱心に指導していただきました。おかげさまで、最終報告会では「1週間でここまでやれたのなら、たいしたものだと思います。」と評価していただけました。

また指導教員の先生方には実習内容に関することだけではなく、進路やキャリアに関する助言もたくさんいただきました。現役の研究者の方から直接お話を聞き、将来の進路について今までよりも具体的なイメージを固めることができました。

最後に、コロナ禍で大変な時期に体験入学を開催していただきありがとうございました。例年に比べると特殊な状況下でしたが、楽しく有意義な1週間を過ごすことができたと思います。