今回私が参加させていただいた課題は電子ビームイオントラップを用いてタングステン多価イオンを生成し、発光スペクトルの観察を行うという内容でした。生成された多価イオンから放射されるスペクトルを測定することで、まだ特定されていないタングステン多価イオンのスペクトルを同定するという目標の基、実験を行いました。
 核融合炉ITERではダイバータと呼ばれる高温に晒される部分の材料として金属の中で最も融点の高いタングステンを使用しています。しかしながら、スパッタリングという現象によってタングステン原子が高温プラズマ内に混入しイオン化することでプラズマの温度を下げてしまうという現象が生じてしまうため、プラズマを制御するにはタングステンイオンがどのような分布になっているかを同定することが必要となります。そこで、イオンの発光から何価のイオンが発生しているかを特定するために1つ一つのイオンの発光スペクトルのモデルを作成していくというのが今回の実験を行う背景でした。まだ誰も答えを知らない未知のものを求めるという経験は今回が初めてだったのですが、予想とは違ったデータが得られた際に実験のアプローチを変える方法等はとても勉強になりました。難しい実験内容ではあったのですが積極的に担当の先生方に質問をし、グループメンバーとも活発に議論し合うことで理解を深め、最後の発表に使う資料を完成させたときは今までにない達成感を味わうことができました。また得られたデータをoriginというソフトを使ってグラフ化する作業もT Aの方に教わり、分かりやすい資料作成の心構えも学ぶことができました。
 今回の体験入学を通して研究者がどのように研究活動を行っているのか知ることができたのに加えて、現在の核融合技術に関する理解をより深めることができました。また核融合というキーワードに興味を持った同年代の学生たちとの交流はとても楽しく、これからの勉強へのモチベーションの向上に繋がりました。
 自分が分からないこと、気になったことは惜しみなく質問するということを心に決めて今回の体験入学に臨んだのですがどの方も親身に対応をしてくれて、課題内容に関わらず総研大での生活のことや博士課程の取得に関することなど多くのことを5日間の中で教えてもらい、自分の進路をより深く考える際の判断材料を増やすことができました。
 最後になりますが、今回の課題を指導してくれた指導教員やT Aの皆様、そして研究室見学等で親身に対応をしてくれた研究員の方々には本当に感謝しています。貴重な体験をさせていただきありがとうございました。