総合研究大学院大学の核融合科学専攻の「夏の体験入学」に参加させて頂き感謝します。私は留学生ですが、指導教員や参加者の皆さんはとても暖かくてご親切に声をかけて頂き嬉しかったです。私は高校時代から核融合研究を憧れているというきっかけで日本に留学しました。核融合研究の一つに取り組んだり、大型ヘリカル装置を自分の目で見たり、制御室の様子を見たりすることができました。
配属課題は「モンテカルロ法による運動論的輸送シミュレーション」でした。トカマク配位の磁場中の荷電粒子がどう振る舞うかをシミュレーションで検討しました。さらに、核融合ではプラズマを閉じ込めることが非常に重要なので、その閉じ込め性能を調べました。プラズマは中性ガスを加熱し、電子とイオインが分離している一つの相です。プラズマの温度は非常に高いため、(理想的には)装置はプラズマに物理的に接触することは許されません。そのため、装置の壁に触れないように磁場を用いてプラズマを閉じ込めます。
磁場中では荷電粒子はラーマ―運動をしながら、ほぼ磁力線に沿って運動します。ラーマ―運動を平均としてキャンセルし、磁力線と平行な速度成分のみを考慮する案内中心近似という近似方がよく使われています。ただし、ラーマ―運動の情報を無視するわけではなく、磁気モーメントとして取り扱われます。ここがプラズマ物理の世界では分野の分岐点となります。つまり、ラーマ―半径が十分に小さくて、その幅内では変動を無視するドリフト運動論近似(新古典輸送)とラーマ―半径の幅内でのミクロな変動まで考慮するジャイロ運動論近似(乱流輸送)と分かれます。ドリフト運動論近似の下でモンテカルロ法によって案内中心軌道を計算するシミュレーションを作成するのが本課題の要点です。さらに、クーロン衝突がある場合と無衝突の場合の案内中心軌道について、両方を調べました。無衝突の場合、荷電粒子の案内中心軌道はバナナ起動という、安定した軌道になりました。つまり、無衝突の場合では閉じ込め性能が良いということが分かりました。衝突がある場合では、モンテカルロ法でクーロン衝突を再現するピッチ角散乱という模擬手法を学びました。衝突によって荷電粒子が拡散することが分かりました。また、動径方向に密度勾配があるため、荷電粒子が外側へと輸送されていくことも分かりました。
この体験入学全体から、とても「高温高密度」な情報が得られました。あまりにも有意義な時間を過ごせて、あっというまに体験入学が終了してしまいました。やはり一週間は物足りないように感じました。これを想定して、私は前もってインターンシップ研修の手続きを行い、夏の体験入学から引き続きインターンシップという形で研究をさらに進めることができました。様々な研究を紹介して頂きました先生方と、二週間、自分のお世話をして頂きました指導教員の先生に本当に感謝します。こうして、長年待ち望んだ夢が叶えられて良かったです。