私は現在高専に在学していて、卒業後は進学することを考えていましたが、具体的な進路が決められずにいました。そこで、インターンも兼ねて参加できるという話を聞き、以前から核融合の研究を行いたいと思っていたため、進路選択の参考になると思い参加を申し込みました。
ところが、体験課題のタイトルはどれも難しそうなものばかりで、体験入学に参加する前は課題の内容を理解できるかどうか心配でした。しかし、実際に参加してみると今まで習ってきた内容が扱われていることがわかり、核融合はプラズマ物理学だけでない幅広い分野の協力が必要であると実感しました。
また、私は実際に進学してから博士号をとり研究職の道へ進むか、それとも修士でメーカーに就職をするか、それに加え博士号を取ったとしてもそのあとの生活が成り立つのかどうかなど、将来についてわからないことがたくさんありました。ですが、キャリアビルディングに参加して、中野先生の生の話を聞けて、研究者になるためにはやはり大変な覚悟が必要であることや、思いのほか生活は成り立つことなどを学び、大変貴重な時間を過ごすことができました。

施設見学では大型のヘリカル装置を見学し、様々な部品が今まで見てきたものと比べ物にならないほどの大きさで未来の文明を支えるうえで大変重要なプロジェクトであることを改めて実感しました。
課題体験では、「放射線計測技術を用いたプラズマ内の高エネルギー粒子研究」という課題を体験し、大型ヘリカル装置に使われている放射線計測機の性能評価を行いました。プラズマ内の状態を知るために、核融合炉内から発生する放射線を計測する必要があるのですが、検出器が半導体検出器かシンチレーション検出器かという違いはあるものの、γ線の相互作用を検出した際にそのエネルギーに応じたパルス出力が得られるというものは同じなので、検出器の後に接続する機器は構造が同じであることがわかりました。測定結果のエネルギースペクトルの横軸はガウスフィットを用いてパルス波高チャネルのピーク値を割り出し、その値をもとに横軸をγ線エネルギーに変換したのですが、検出器により本来発生しないはずのズレが生じ、エネルギーが低いほどズレが大きくなるという問題がありました。このズレはガウスフィットをした際の誤差に起因するものと考え、ポスター発表に臨んだのですが、ガウスフィットの誤差の原因について質問があり、返答に困ってしまうことがありました。このため、横軸のズレに関してさらに詳しく検証を行うべきであったと感じました。
今回の実験ではエネルギー分解能のみで性能評価を行いましたが半導体検出器では半導体の純度によって性能がかわり、シンチレーション検出器では結晶の種類や大きさによって性能が変わることがわかりました。また、性能の変化に応じて検出器の価格は対数表記で表示しなければならないほどのスケールで変化することがわかりました。

この体験入学を通じて、核融合に関する理解が深まっただけでなく、研究やその発表をするということはどういうものかを体験することができ、非常に充実した1週間を過ごすことができました。最後となりますがこのような大変貴重な機会を作ってくださった担当教員の小川先生、西谷先生、磯部先生、TAの方、ならびに研究所の皆さまには大変感謝しております。ありがとうございました。