大学3年生である私は、卒業後の進路を就職か進学かで迷っており、他大学の院に進学した時のイメージをつかむため、また、現在大学で学んでいる原子力(主に軽水炉)の知識が生かせる進学先ということで参加を決意しました。
体験入学で私は「世界初!高温超電導ヘリカルコイルの製作と実験」というテーマに参加し、LHDの1/20のスケールのヘリカルコイルを同じテーマの参加者と指導教員の方といっしょに作製しました。
今回コイルを作るために使用した線材は液体窒素で冷却できる温度でも超伝導になる素材で、現在の液体ヘリウム冷却よりも簡単に冷却できるのが利点でした。しかし、線材が曲げやねじれに弱いため、コイルの作製はメンバー全員で慎重に巻いていく必要がありました。
朝から夜の遅くまで、他のテーマの人たちよりも時間がかかりましたが、無事に巻き終えることができた時には大きな達成感を感じることができました。
核融合やプラズマの知識をほとんど持っていなかった私でしたが、必要なことは核融合科学研究所の方が丁寧に教えてくださったので、知識不足で不自由することはありませんでした。
核融合の技術は多くの科学技術を集結して作られていること、そして核融合による発電は人類の夢である、と研究所の皆さんは何度もおっしゃっていました。そしてその通りだと思うのと同時に、私たちが生きているうちには実現しないであろう技術でも、未来のために研究しているという姿勢に深く感心しました。
この夏の体験学習を通じて私は、核融合の理解はもちろん、教員の方やそこに通う先輩学生から「研究者」としての生き方を学ばせていただくことができたと思っています。
私は核融合科学研究所に進学するか、そもそも核融合の道に進むのかどうかも未定のままです。現在学んでいる軽水炉、高速炉も私にとって魅力的だからです。しかし、「研究者」として人類のエネルギー問題に取り組んでいきたいという思いは一層強くなりました。
エネルギー問題は人類の直面する喫緊の課題です。その課題に対するアプローチの一つとして、今回の夏の体験学習で核融合という方法に触れられたことは私の中でとても貴重な経験となりました。
最後になりましたが核融合研究所の皆さん、ご指導ありがとうございました。
2010.8.25. 世界初の高温超電導線材によるヘリカルコイル製作に成功!