現在僕は長野高専での卒業研究で大気圧プラズマの計測方法に関する研究を行っており、研究中に行った実験の計測データの処理方法に悩んでいたため、今回の体験入学で実験データの処理方法に関して学びたいと考えたため参加させていただきました。
1日目。研究所に着くとすぐに体験入学のガイダンスを行い、その次に核融合技術の必要性についての簡単な講義を受けました。講義の内容は既に知っているものがほとんどでしたが、改めて講義を受ける事で現在の世界の中での核融合技術の必要性について実感しました。講義の後は研究所内の見学を行いました。LHDの制御室やバーチャルリアリティシステム、LHD本体などいろいろなところを見学しました。LHDの実際の大きさにも驚きましたが、これだけ複雑な装置を実際に動作させたときに上手く動くという装置自体の精密さと、それを確実に制御できるという制御系の能力の高さに驚きました。見学後の夜は懇親会を行いました。高専から大学に行った方の体験談や苦労話を実際に聞けて非常に参考になりました。総研大生の方とも話す事が出来て、実際の総研大の中での生活がどのようなものか聞けてよかったです。
2日目。この日からは毎朝総研大の方が総研大内での生活や就職状況などパンフレットには乗っていないような事をプレゼンしてくれました。総研大卒業後の進路というのは非常に気になっていた部分だったので、とても参考になりました。朝会後は各々実習をする場所に移り、実際に実習がスタートしました。僕の実習テーマは「実験データ処理入門」で、江本先生、中西先生の二人の先生についていただきました。まず最初にこの実習の内容と目的、実際の進め方などのガイダンスを受けました。今回の実習では、結果が分かり易く最終日の発表をする際にやり易い事や話題的に非常にタイムリーなものという事で、「ワールドカップ実況音声中のブブゼラの音をノイズと見なしてそれを除去する」という事を行いました。内容的には核融合とは外れているように感じるかもしれませんが、「ノイズ除去」はLHDでの実験データを処理する際にも用いられている非常に重要な技術です。今回の実習でプログラムを組むのに必要な開発環境は事前に用意されていたのでガイダンス後に早速やり始めました。今回プログラムを組むのにはRubyやC++と同じようオブジェクト指向言語であるPythonを使用し、そこに数値処理用のライブラリ(scipyなど)を追加して使いました。プログラムはCなどで組んだ事があったのですが、オブジェクト指向言語はほとんど使った事が無かったため、この日の午前中はオブジェクト指向とPythonの基礎勉強を行っていました。午後から江本先生に教えられつつノイズ除去のプログラムを作りました。この日はこのような信号処理を行う上で必要になる、信号を取り込んでからのFFT→逆FFT→信号復元→出力を行う部分のプログラムを作りました。翌日からはこの実習の要となるノイズ除去部分のプログラムを作ります。
3日目。朝礼後から早速江本先生の指導を受けつつノイズ除去部分のプログラムを作り始めました。今回は二つの方法でノイズ除去を行う事になったので、まず最初は簡単な方のノイズリダクション法を使ったプログラムを組みました。所々江本先生にアドバイスをもらいつつ組んで行き、お昼前にはなんとか出来上がりました。今回使っているPythonという言語ですが、組方自体はCやC++とかなり似ていたので(関数の区切りを中括弧じゃなくてインデントで表現するなどの違いはあるが)やり易いように感じました。午後はもう一つの方法であるウィーナフィルタリング法を使いプログラムを組みました。夕方には組み終えたため、実際に今回作った2つのプログラムを使ってノイズ除去を行い、出力信号を比較してみました。すると、それぞれの方法で違った特性があり、どの方法がどんな場合に上手くノイズを除去でき、どんな場合に上手くノイズを除去できないか(ノイズは除去できるが取り出したい信号まで歪んでしまうなど)が非常によく判り、ノイズ除去を行う際にはノイズ自体の特性や種類を考え、それによって除去方法もそれに最適なものを選択しなければならないという事がよくわかりました。
4日目。この日は翌日の発表会用にスライド作りを行いました。午前中にだいたいまとめ終え、午後は江本先生と中西先生について行き、初日の施設見学では見る事の出来なかったスパコンやLHDの地下部分、測定したデータを管理している部屋などを見せていただきました。LHDでの実験データが集まってくる部屋のノイズ対策の徹底ぶりにはとても驚きました。通常の見学コースでは見る事の出来ないところを見る事が出来たのでとてもうれしかったです。見学後は発表用のスライドを少し手直した後、先生方と発表の練習を行いました。スライドの配置や表現方法など細かい部分まで指摘してもらい、とても勉強になりました。練習後は指摘していただいた部分を直した後、宿舎に戻りました。宿舎の中では翌日の発表に備えて原稿を作ったり、何回か練習を行いました。 5日目。あっという間に最終日です。大勢の前での発表はなれていなかったのでかなり緊張しましたが、発表後にでた質問事項にもしっかりと答えられたのでよい発表が出来たと思います。
長いようであっという間の5日間でした。今回指導していただいた江本先生と中西先生には様々な事を教えてもらい、非常に勉強になりました。今回学んだ知識は今現在高専で行っている卒業研究で直にでも役立てるものなので、実際に使っていこうと思います。5日間本当にありがとうございました。