私の通う大学では実験をする機会はあっても、シミュレーションをする機会はほとんどありませんでした。そこで、シミュレーションを体験できる夏の体験入学に応募をしました。体験入学前までは漠然とシミュレートできるとだけ考えていました。よく言われる、第3の物理学ということもあり、理論や実験ではできないことを、もしくはそれ以上にすごいことができると妄想を広げていました。
課題の範囲を見てみると、今回の流体シミュレーションが理学部物理の範囲と思っていた私にとって衝撃的でした。書いてあることがなんとなくにしかつかめない。正確には何もわかっていなかったのですが、課題を共にする学生に会ってから機械工学の専攻であったことを知りました。それからはずいぶんと場違いなところに来たかもしれないと怖くもなりました。しかしほとんど知らないのなら、それはめったにないことで、視野を広げるチャンスと2日目の晩から腹をくくったのを今でも覚えています。
課題は2次元での学習用に変えてくださっていたり、担当教員の方が丁寧に教えてくださったので、ずいぶん楽しめました。スーパーコンピュータの一角を使わせていただいたり、その性能により時間がどれほど短縮されるか、また、どれほど正しくシミュレートできるかは身をもって知れました。計算が破綻する前にシミュレートできていない状況もあるのはこの学習を通してわかったことです。特に印象に残っているのは、スーパーコンピュータはシミュレーションの種類によって性能を変えるということです。考えてみれば当然なのかもしれませんが、最近のスーパーコンピュータ事情は体験学習ならでは話だったと思います。
授業以外でも宿舎の談話スペースで他大学他学部の方と交流ができました。大学に閉じこもった生活をしたままでは体験できないことです。高専の生活や他大学の学習進度、お勧めの参考書から研究室の話まで実にいろいろでした。
今回の体験入学により、進路の選択肢が広がったことは間違いありません。シミュレーションとはどのような状況を再現できるのか、どのような状況に有益なのか。研究室に入る前にいろいろ知れるのはここぐらいかもしれません。教員と学生の距離がずいぶん近い体験は研究室に入る前にはほとんどありません。体験入学では貴重な体験をさせていただいたので、大学院として進む選択肢の一つとして考えたり、友人にも総研大のことを伝えていきたいと思います。