今夏、私は核融合科学研究所にて行われた、総合研究大学院大学・物理科学研究科・核融合科学専攻の体験入学に参加しました。私は現在、工学部の4年生です。この体験入学に参加した理由は、実際に実験やデータの解析に触れることで、のちに作成する卒業論文を進めるうえで役に立つのではないかと思ったためです。また、外部研究機関で実験や解析などを経験できる機会はとても貴重であり、学部4年という参加できる最後のチャンスでもあったためです。
実習の流れとしては、初日、まずは夏の体験入学の開校式が行われました。続いて懇親会が開かれ、総研大の先生方、大学院生方、そして全国各地の高専や大学から来た参加者たちと話をして打ち解けることができました。どんな人たちと実習をするのか不安がありましたが、その考えは杞憂となりました。
翌日は、午前中に大型ヘリカル装置(LHD)やスーパーコンピュータ、制御室などを見学しました。施設や機器の大規模さには圧倒され、装置の超高真空を作る技術はお話が聞けてとても為になりました。近々、LHDでは重水素を用いた実験がなされると聞いて、核融合の研究が大きく進む節目の時期でもあることを感じました。ICRF加熱装置の実験映像の見学では、実際にプラズマを発生させてそれを制御していたという精密さに驚きました。
午後からはいよいよ、「核融合プラズマからのスペクトル線解析」というテーマの下に私たちの実習が始まりました。村上先生、加藤先生、鈴木先生が担当してくださり、作業が停滞したときには的確なアドバイスをしていただきました。本テーマの目的は、LHDプラズマ中に鉄のペレットを入射したときのスペクトル線の解析をし、その強度比と電子密度の関係を調べて解析結果と理論モデルとを比較して理論モデルの妥当性を評価することでした。三日間をかけて、LHDでの実験結果についてひたすらプロファイルフィッティングをし、鉄のスペクトル線の強度比を求め、最終的に、計算による理論モデルを評価するに値する量の解析結果を導き出しました。ここでのフィッティング作業は、プラズマに限らず、様々な分光実験に役に立つものだと確信することができました。また、LHDの最新データを扱っていたため、最先端の実験の一端を担うことができたという喜びを同時に感じました。最終日のポスター発表では、他のグループの実習での濃い成果を聴くことができ、どれも興味を引く発表ばかりでした。
実習は、朝から時には夜の遅くまで、作業の停滞がありながらもグループなりの考察を行うことができました。そして発表が終了したときにはやはり達成感がありました。
今回の体験入学は私が考えていた目的以上のものを得られたと思います。実験結果の解析方法を学べただけでなく、様々な人たちとの繋がりを持つことができました。核融合というテーマの下に、これだけの貴重な体験ができたことを嬉しく思います。ご指導してくださいました核融合科学研究所の先生方、ありがとうございました。